上ノ山(87日目)
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上ノ山(89日)
「第88日」
19××年11月1日(水)薄曇時々雨
上ノ山 → 米沢
寝袋の中、寒さから身を守ろうと全身を小さく丸めるように包まっていた。所詮地面の上、と言っても間違いではない、慣れない余りの寒さで目覚めてしまった。
目覚めてしまったからには、もう寒さを我慢しながらもう一度寝入ろうとすることもなかろう。朝日がもう昇って来たのだと自分に言い聞かせて起き上がった。
午前6時20分、起床。全身を寒さに晒しているとますます寒く感じる。少しでも寒さから身を守るかのように、直ぐ売店の軒下へと移動。
朝食も早く済ませてしまおうとする。とにかく寒い。手がかじかんでしまう。ラジオ講座を聞きながら食事をしようなどと悠長なことを考えてもいたが、寒いの何のと、早く食べ終えてしまうのが先決だ。ブルブルと震えながら何とか食事を取り続けていた。実に寒い。早くここから抜け出よう。
午前7時55分、まだ開店していない売店前を発ち、再び山ノ上市内へと戻って行った。
そう言えば、もう何日も風呂に入っていない。この寒さ! 温まりたい!
<何処かに共同湯はあるのか?
<一つぐらいはある筈、
<この朝の寒さの中、探すのがまた一苦労となるのか、
――― ひとり言を言い続けていた。
<この寒さはただものではない。風呂はどこだ?
<一層のこと、風呂に入らず先へと進んで行ってしまおうか。
沿道に目を配りながら走っていると運良くと言うのか、偶々と言えようか、バス停「新丁浴場前」を見出した。と言う事は直ぐ近くに公衆浴場がある筈だ。
案の定、探し当てた。午前8時20分からの約45分間、入湯料10円を払って、久し振りに温泉風呂気分を味わった。温かい。良い湯だった。寒かったのに全て跡形ものなく消えた。さっきまでは寒さに抵抗していた人だったが、今はそんなことまるで嘘だったかのような人になった。
午前9時20分、新たな気分で出発。希望が感じられる。今日は米沢までだ。緩やかな上り坂が続く。山並みは全て紅葉で化粧されている。
でも雨が降って来そうな空模様。空の変化を気にしながら、ゆっくり、マイペース、足も重たく走って行く。
午前10時45分、「赤湯温泉入口前」の店頭で雨宿り。
<もう一度温泉にでも入って行こうか?
それよりも腹を空かしているこの人。雨宿り中、待ち時間を利用してビスケットを齧っていた。15分間ほど経った後、出発。
午前11時11分、今度はバス停小屋の中で雨宿り。雨に濡れたくはない。結局、何をしていたか、午後1時まで、その小屋の中に陣取って旅日記を付けていた。昼食も例のメニューだ。つまり食パンにマヨネーズを塗ったものだけ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後1時半、そのバス停を発ち、そのまま米沢までノンストップで直行。
午後2時20分、米沢市に入ったという道路標識を目にする。
<でも本当に米沢に入ったのだろうか。
そんな印象を受けた。随分とひっそりとしている。比較的人通りの多い所を見出しながら、そんな道路を通って行けば米沢駅に着けるだろう。走って行く。
途中、デパートに入ったり、商店に立寄ったり、道草をたくさん食いながら、そうこうするうちに暗くなってしまった。
<今晩は米沢駅の軒下、地べたにゴロ寝でもしようか
人に教えて貰った通りに駅にやって来たが、泊れるような所ではない。この建物には軒下というものが長らくなかったらしく、軒下の取り付け工事をやっていた。来るのが早過ぎた。来年当たりにまた来れば軒下で寝られるだろう。
他に泊れる所がないものかと探しながら、今来た道路を戻って行く。少しばかりの不快、不便を度外視すれば、寝られるような所、探せばそれなりに見出せるもの。一夜の宿、永久に不快を味わう訳ではない。一時の辛抱、我慢、我慢。一過性の不快などすぐ忘れてしまう。今晩も何とか見出せるだろう。
道路沿いに自転車置場が見出された。誰の管理というわけでもないらしい。トタン一枚で道路から遮断されているだけ。そこに取り残されていた一台の自転車。雨傘を使って、こんな所ではこれ以上良い寝場所はないというものを応急的に作り上げ、地面に寝転んだ。
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