北海道直送・しーおー・じぇいぴー

登別温泉→長万部 日本一周ひとり旅↑ 江差→函館 

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 「第46日」



  19××年9月20日(水)雨時々曇り
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■雨への想い

 
目覚めた。体中が痛む。もう横になっていられない。それに寒い。長袖をもう一枚、二重に着た。しかしそれでも寒さが襲ってくる。起床は午前7時45分。


 あれっ、雨、雨ではないのか。また雨だ!

 雨、雨よ! おお、雨よ、雨。雨、雨、雨。何時まで降り続けば気が済むと言うのか? 



 ぼくは一旅人に過ぎないが、雨は本当に嫌になる。第一、あのフランスの詩人ではないが、雨が我が心の中まで降っているように思われてしまう。第二に、次の目的地までと行くのに、雨の所為で、濡れて、遠く、だるく、疲れて、余計に時間が掛かってしまう。



 雨、雨よ! おお、雨よ。止むまで待っていろ、というのか。でも駅の待合室内、椅子に腰掛けたまま、ぼけっ〜と待っているなんて、、、、。何のする術もない。我は何をする人ぞ? 人生途上での遣る瀬無さ、雨に託(かこつ)けてそんなことに想いを馳せていた。

 自分をどう慰めれば良いのか。本でも読んで時間を潰す? 実はもともと本などは持ち歩いていなかった。読書をするための旅ではないからだ、と。



 9月に入った今頃の内地では大体台風シーズンも終るか終らないかという時期だろう。が、ここ道内はどうなのか。道内の人の話しを総合すると、今年の夏は雨らしい雨が降ったことがなく晴天続き、土地によっては水飢饉に見舞われたそうだ。今年は例年になく全く変則的な天候状態なのだそうだ。



 雨が止むのを期待しながら、何もすることがないから雨がここ4、5日降る理由を自分勝手に解釈していた。何故、こうも雨が降るのか。つまり、天は夏の晴天続きの反動として、秋口にまとめて面倒を見ようと計画を立てたのだ。



 夏の雨量の少なさを今になって取り戻して上げようとしているのだろう。今度の台風の進路を思い起こして見るといい。渡島(オシマ)半島付近を通過して稚内、宗谷地域に抜けたかと思われた台風20号、何を思ったのか、何かをやり残したままだったのか、ユーターン。そして、渡島半島の西海上に停滞、足踏み、居座ってしまった。

 雨がより多く降る所へとぼくはわざわざ旅のコースを取り続けていたが、これは偶然事と考えるには余りにも偶然事過ぎる。今日は江差までの予定、台風の近くまでわざわざ出向いて行こうとしている。



 雨について、色々と個人的な思いを綴っているうちに、雨が小降りになってきた。そろそろ出掛けようか。

 午前10時40分、長万部駅を出る。



 


 
■面白いトラック運転手さん

 国道5号線沿いを40分間歩き続けた。一層のこと、国縫(クンヌイ)まで歩いて行ってしまおう。そう自分に言い聞かせて歩き続けていたが、途中で気も変わって、というか歩くのに疲れてしまって、ヒッチハイク開始だ。

 トラックが止まった。

 「眠たくて眠たくしょうがないから、止まったんだよ。誰かと話していれば眠けもなくなるだろう」

 一昨日、昨日と台風のため、フェリーボートが欠航したので、待たされたのが3時間、9時間、そして今日は3時間と余り寝ていない。しかも、今日中にフェリーに乗り、静岡まで帰らなければならない。そんなことを話してくれる。室蘭で荷を降ろした帰りだそうだ。

 運転手さんもこの雨の影響をもろに受けてしまっていたのだった。ぼくは国縫から半島を横断する積もりだったが、運転手さんは函館まで行くということだったので、そのまま乗せて貰う。途中、道路の悪い所を走っていると理解に苦しむことを言う。



 「道路を飲んでしまったんだろう、食べてしまったんだろう」


 変なことを言う人だ。道路を飲むとか食べてしまったとか、そんな日本語表現にちょっと度肝を抜かれ、この人何を言っているのだろうかと理解出来なかった。頭の鈍いぼくも暫くして閃いたのであったが、それは冗談、それも痛烈な冗談だったらしい。分かってしまえば何のこともない、そこでぼくも負けずに返した。



 「相当美味いんでしょうねえ」

 「そりゃあ、そうだよ」



 話が合った。そして、同じような話が続くこと、続くこと。沿道、ルート番号の標識が少ないのもそうだろう。でも誰が? 疑問は残る。がそうはっきりと言わないところがこの会話の面白さ。出掛ける時には止んでいた雨も、何時の間にかまた降り出していた。

 直接、函館までは行かないことにした。江差までが60キロメートル地点の交差点で降りる。楽しい便乗を提供してくれた運転手さんには丁重にお礼を言って別れた。国道227号線への近道のようだ。午後1時5分だった。

 




 
■史上最短時間乗車

 引き続き道路沿いを歩き続ける。ヒッチしながら進んで行こうとするのだが、車、止まらない。皆、ぼくの知らない所で申し合わせが成立していたかの如く、通過だ。雨は止んでいた。雨上がりだからか、それともここ地元の人達はヒッチハイクということを知らないのだろうか。止まらない理由を勝手に想像していた。

 50メートルと離れていない後方、横道から出て来た軽自動車に手を上げて反応を窺おうとすると、若者もニコニコしながら言う。

 「角(かど)まで乗せてってやるよ」



 角までって、何処だろう? 雨の所為か、即座には頭の働かないぼくだった。とにかく乗せてもらった。午後2時25分。

 乗ったと思ったら、降りてくれ、であった。車は停車して動こうとしない。ここまで、ということらしい。角(かど)という土地までの長距離を行ってくれるものと期待したのだったが、、、、、、。

 たったの3分間だけ。そうか、この角から国道227号線へと入るのか。角とはこの角のことだったのか! この北海道一周の旅において、ヒッチした車の中では最短便乗時間だった、と思う。

 ちょっと乗ったと思ったら、もう降りた。本当に乗っていたのかとつい忘れそうだ。逐一メモしていたのでこうして最短便乗日本記録が我がひとり旅の記にも残った。


 


 
■江差へ

 その角で立っていた所、午後2時31分、この道路へと入ろうとするトラックを直ぐに捕まえる。進行方向、前方には車が殆ど走っていない。空いている国道を結構なスピードですっ飛ばす。風が強く、車が横殴りに煽られそう。舗装道路とジャリ道路とが交互に同居する国道だ。山の中を走って行く。厚沢部町まで。江差まであと10キロ程との話しだ。

 車に乗るといつもそうなのだが、運転手さんとは出来るだけたくさん話そうとする自分、だから周囲の景色やら町の様子などには時に余り注意を払ったりはしない。

 下車すると、物凄い強風だ。この旅男の髪が振り乱れる。風に対抗するかのごとく頭を、上半身を低くして進んで行く。向うから来る車ごとに手を上げ、やっと止まってくれた乗用車。午後3時40分、富栄(トミエイ)から16分間の便乗。

 「江差なんて見るものは何もないよ」

 


 横山家に泊る予定だと伝えると、そうか、知っているよ、とその家の前まで乗せて来てくれた。午後3時14分。想像していたのと大分違う。古いお屋敷とでも言うのか、写真から受けた印象と現実に肉眼で見るのとでは全然異なっている。


 



 
■横山家に宿泊

 今晩は3人泊った。これで満員なのだそうだ。鴎(カモメ)島へと早速行ったが、風が強く寒かっただけ。奥尻島へのフェリーはもう7日間欠航しているそうだ。島へと渡るのは考え物だ。

 夕食は午後8時過ぎだった。いつものとは勝手の違った、遅刻しても何らの釈明もなくやって来た食事のようだった。催促するのもどうかと思って出てくるまでずっと黙っていたが、その間、腹が猛烈に減って仕方なかった


 

 

 

 

 

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