「能代→男鹿半島」  日本一周ひとり旅↑  「戸賀→男鹿」衣類は乾かず
「第60日」

 

 19××年10月4日(水)曇り後雨 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  男鹿半島、戸賀 


  ■ 食べ放題の、飲み放題の朝食

午前6時の起床。これはYHで決められた時間キッカリだ。左足の甲が痛む。昨日と同様、一晩休んだ結果、痛みが取れたということにはならなかった。 このところ歩く距離が相当長く、その為なのか、まだ慣れない為なのか。

朝食は食パンであった。小さく慎ましく包まれたバターが一個と食パン一枚という組み合わせで食べ、コーヒーの方は飲み放題ということで飲みに飲んだ。 食パンを何枚食べたか、バターの包み紙の枚数を数えれば簡単に算出出来たことだろうが、そんなことはどうでもいい、とにかく腹一杯に食べて昼食を浮かすのである。 コーヒーは確か5杯飲んだと思う。昨晩の夕食時と同様、最後の最後まで粘って食事を取っていた。


 

 

■「男鹿半島を徒歩で一周するぞ!?」

YHを出る前、会う人ごとに男鹿半島一周を徒歩ですると伝えていた。公言していた手前、いや最初からその積りでいたから、 車は通っていたが、手を上げる気は全然なかった。一時は車が止まってくれないと相当悩んだこともあったが、ヒッチハイクではなく、 ハイクを主、ヒッチを従とすれば気も楽だ。でもそこの土地の人たちと、つまり車をヒッチした運転手さんと直に話す機会が減ってしまう。まあ、これは仕方ないかもしれない。

気楽に旅を続けて行けば良い。何をそんなに先を急がなければならないのか。気ままな旅だ。ゆっくりと気長に行こうよ。

それに今にして思えば、初めてこの日本全国を旅しようというそんな思いが心に浮かんで来た時、 その時どうのような形態の旅をしたいと思っていたかと言うと、確か「徒歩の旅」だった筈。

日本一周徒歩の旅。日本を歩いて歩いて歩き回る。そんな歩きの旅をすると心に決めていた。 実際にまだやったことがなく、想像の世界だけで考えていたからそうなのかもしれないが、 車、汽車、その他の乗り物を利用せずに、この足だけで行きたい所へと行くというものであった。

今日からは、そう、遅れ馳せながらも、初心貫徹! でも、これでは正に遅きに失した感がある。言い訳のようにも聞こえる。 そもそもの初めから徒歩の旅を続けてきたのではなかったのだから。今日に限って、「徒歩の旅だ」などと変に気負っている。




毎日徒歩で行き着ける所まで行き、夜、そこで泊れば良いのではないか。 勿論、そういう行き当たりばったりな旅をすることで気懸りなのはまず寝場所の確保。 夕暮れ近くになって、今夜何処か適当な所に泊れるだろうか、と気にし始める。 そして第二には食事。そんな点が気掛かりであった。

 

第一点については過去6日間に限って言うと、どうにかこうにか探し当てて泊って来た。そういう実績がある。 それはそれで良し、としよう。そうした要領で続けて行けばいいのだ。第二点については栄養を考えなければならないが、 栄養学を勉強したこともないし、どうすれば良いのだろう。

雨が降り続いてばかりいると、徒歩の旅もトホホの度重なりとなってしまい、まるで朝の決意をあざ笑っているかのような天候、 男鹿半島一周の旅は初っ端から挫折してしまったかのような形になってしまった。
 

 


 
 ■ YHを出発、入道崎へ

 

YHを午前9時に出たのだが、殆どの人達はそれまでに出発してしまっていた。ぼく一人だけが最後に残った者として発ったようだ。

曇り空で今にも雨が降り出しそう、しかも風が吹き込んでいるという今朝の天候。天気予報は午後から雨という。

入道崎までの、急坂を上ったり下りたり、海からの強風下を歩いて行く。

午前10時前に入道崎に着いた。

海岸下へ下へと降りて行った。ごつごつと荒らくれたような岩が海面を景色立てている。静岡沼津から来たという人と30分間程、岩の上に座って話し込む。

天気が心配だ。雨が降って来ないうちに行かねば、とにかく行かねばと、そんな焦った気持ちが落着いて話し込むことを拒む。

午前11時、誰も歩いていない、車も通っていない。風だけがやたらと吹き荒れているという海岸沿いの道路を一人で歩いていた。 ああ、とうとう、危惧していたように、パラパラと天から例のものが降り落ちてくる。大した事はないだろうと希望的にどんどんと歩いて行くが、 どうも本降りとなる気配。風も強く、一段と強く、とうとう激しく降って来た。

そのまま、道路沿いを先へ先へと進んで行くが、雨宿りが出来そうな所が、、どこかにないかと目を皿のようにして探しているが、全然見えない。 時折車が通りすぎて行くが、そして反対方向からもあの特有な音を立てながら通り去って行く。 一箇所に留まっていることも出来ず雨に濡れながらも歩を進めた。もう全身、びしょびしょ濡れだ。

 


1時間後、ちょうど正午だった。道路沿いに小屋が見えた。道路工事人夫用の休憩場所か、工事道具置き場か、 鍵が掛けられ中に入れないようになっているようだ。が、状況が状況だ、つまり雨に降られっぱなしになっているので、雨宿りの積りで、こじ開けて中に入った。

藁が敷いてあった。早速、衣類全部を脱ぎ、インスタント物干しに引っ掛け、暫くは裸のままでいた。藁の臭いが最初気になったが、直ぐ慣れてくる。


 




 ■小屋に缶詰になる

午後からは風雨のため動けず、この一人分の小屋に缶詰となった。過去一度あったことは二度ある、と言えようか。

ラジオを聞きながら、なす術もなく、午後4時半には寝袋の中に入って体を温める。外では雨は降ったり、小降りになったり、 でも止むことはなく、午後もずっと降り続いていた。時には台風なみの風雨であった。



体が段々と温かくなって来た所為か、知らぬ間に寝入ってしまった。明日は晴れるだろう。                                                             

 

 

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