そう勧めてくれたがお代わりの度にお茶碗を手渡すのがどうも気が引ける。これで3回目だ。もうこれ位にしておこう。ぼくは大食漢であったから、もしその食欲にブレーキを掛け
ていなかったら、どうなっていたことだろう。御住職、びっくりして朝っぱらから腰でも抜かしてしまい立ち上がれなくなっていたかもしれない。
朝食の献立:
菊の漬物、
白菜、大根の漬物、
納豆、ワカメと豆腐の味噌汁
もちろん、ご飯
午前10時になるかならない頃、お客さんが一人来られて、ちょうどぼくの隣に腰を降ろす。昨晩の、新任のおまわりさんのことを思い出した。もう自分も出掛ける潮時だ
。そうヒントを得た。ご住職に挨拶をして外へと出る。
「色々とありがとう御座いました。奥さん、お嬢さんにも宜しくお伝え下さい」
頂いたリンゴ2個とボーロ菓子はリュックに詰めた。
出発だ。掃き清められた庭を横切って歩いて行こうとすると、後方、窓をがらっと開けて、身を乗り出すかのようにして、声が掛かった。
「お気を付けて! お元気で!」
ぼくは振り向いた。円満なる笑顔を作って、ぼくもお嬢さんに手を振って応える。
お世話になった円満時を後にした。
お世話になった新庄の街から去り難いのだろうか。午前10時5分に新庄駅前に着き、観光案内所へ行ってパンフレット類を貰い、何だかんだの準備で午前11時半に駅前を出て、街を出たのが
漸く正午ちょうど。
■ 最上川沿いを走る
最上川に沿って走った。陸羽西線に沿っても走る。日が山の影になって寒い。早く日当たりに出たい。しかし最上川に沿って走っている間は無理な相談
、最上川ともお別れをして初めて日が再び当って来た。
■ 酒田に到着
午後3時半、酒田市内に入る。
午後4時、ショッピングセンターの前のベンチに腰掛け、旅館「ゆさや」の女将さんに作って頂いた大きなおにぎり2個、山形の御婦人達に貰った残りのゆで玉子2個
、これらで早い夕食を取る。
この暑さ、腐ってしまうのでないかと恐れていたおにぎり、食べてみると美味い。昆布巻き、しゃけ、沢庵、きゅうりの漬物が付いていた。どうしてこうも美味いのか。美味いと言っても限りがあった。
■ 日本最古の木造灯台下暗し近くで寝る
午後4時半、酒田駅に着く。さっそく今晩のねぐら探しであった。可能性はなし。
光が丘公園とパンフレットには記されている。その通りへと向って行くが、その近くまで来て通りすがりの人に訊くと公園とは名だけで、野球場とかテニスコートをいっしょくたんにして公園と呼んでいるに過ぎない。
じゃあ、もう一つの日和山公園に行ってみようか。
午後6時半、引き戻る途中、消防署、そして善導寺というお寺に一泊を所望したが、どちらとも断られた。
午後6時45分、坂道を登って日和山公園に着いた。自転車ごと乗り入れて、日本で最古の木造燈台の側、東屋のベンチに寝袋を敷いた。
今晩はまたも野宿に戻ってしまった。午後7時40分、寝る。日本で最古の木材灯台 だと言っても何の感慨もなかった。