"オーストリア語"について
 
        
          ・・・・・・・・・・わたしもあなたも直ぐに分かるようになって、 喋れるようになれる?     
  
 
  
 
『オーストリアでは何語なんですか?』
 
 『何語って?』
 
  
 
          『オーストリアの人たちは何語を喋っているのですか?』 
 
  
 『もちろん「オーストリア語」ですよ。』 
 
  『オーストリア語」・・・ですか?』 
  
 
 
  『日本の人たちは何語を喋るのですか、と聞かれれば「日本語」ですよ、と答えるでしょう。 
 同じですよ。オーストリアの人たちの中には英語を喋る人もいますし、フランス語を喋るひともいますよ。でも大抵は「オーストリア語」ですよ。それは日本の人たちの中で英語を喋る人もいますし、フランス語、ドイツ語、その他の外国語を喋るひともいるでしょう。でも一般的に言って「日本語」ですよね。同じ考え方ですよ。』 
 
  
 
 
 
  『「オーストリア語」が話されているのですか? 知らなかった。オーストリアでもドイツ語が話されているのかと思い込んでいましたが、そうではないんですね?』 
 
  
 
 
 
  『ええ、そうではないようですよ。 
 オーストリアでは「オーストリア語」が喋られています。わたしも知らなかったのですが漸く分かってきたのですよ。「オーストリア語」が分かってきたというのではなく、当地オーストリアの人たちは「オーストリア語」を喋っているのだなあ、ということが分かってきたのですよ。「オーストリア語」の存在を意識的に認識し始めたと言い換えた方が正確かもしれませんが。』 
 
  
 
 
 
  『へえ、じゃ、日本で、大学で、ラジオまたはテレビ講座でドイツ語を学んでいますが、オーストリアでは通じないんですか?』  
 
  
 
 『通じないことはないでしょう。あなたの「ドイツ語」を理解出来る人はオーストリアにはたくさんいると思いますよ。でもオーストリアの人たちが喋ることをあなたが100パーセント分かるかは保証できませんね。いや、わたしのことをつい普遍化してしまいました。分かる人は分かる、と言い換えましょう。尤も分かるのに時間が掛かるようですね。 
 若い人は違うかも知れませんが』
 
 
 
  『オーストリアではドイツ語が通用するのではないのですか?』 
 
  
 
 『ドイツ語ですよ。でもカッコつきのドイツ語と言って置きましょうか。別名「オーストリア語」ですね。これはわたしの、勝手な命名です。「オーストリア語」に当たることばが存在するのかどうかは知りません。日本から持ってきた独和辞典を紐解いても「オーストリア語」という単語は出てきませんでした。』 
 
 
 
 
  『オーストリアにこれから行こうと計画しているのですが、そうするとドイツ語は勉強しても無駄だったということになってしまうのでしょうか。』 
 
  
 
 『そんなことはないですよ。ドイツ語をしっかりと勉強してくれば、ドイツだけでなくオーストリアでもそれ相応に報いられると思いますよ。オーストリアでの観光旅行にも、オーストリアの滞在でも結構楽しめると思いますよ。全然分からないということではないかと思いますが』
 
 
 
 『オーストリアではドイツ語だと思っていたのですが、「オーストリア語」ですか。これは初耳です。誰もそんなこと教えてくれませんでしたよ。』 
 
  
 
 『そうですよね。でも今、こうして知ったということで新たな心構えでドイツ語に取り組めますよね。』
 
 
             
 
 
  
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ そんな会話が夢の中で交わされていました。
                         
 誰との会話であったかは定かではありません。 
                       
  でも、会話は更に続いて行きました。
 
  
 
 
 
 
 『で、「オーストリア語」とは具体的にどういうことばなんですか?』 
 
  
 
  『「オーストリア語」とはドイツ語ですよ。』 
 
 
 『えっ、さっきドイツ語ではない、と仰いませんでしたか。何だか良く分かりません。』 
 
  
 
  『ドイツ語ではない、とは言いませんでしたよ。そんな風に取れる言い方をしましたが、、、、(笑)。「オーストリア語」はドイツ語の一種とでも言いましょうか、ドイツ語そのものと言い切ってしまうことは出来ないようなのですよ。でもドイツ語の一種です、と表現すると、オーストリアの人たちの方が気を悪くするかもしれません。 
 だから「オーストリア語」というドイツ語と言っておきましょう。何だか分かったような分からないような言い方になってしまっていますが』
 
 
 
 『「オーストリア語」が「オーストリア語」であると言える特長的なことは何なんでしょうか?』        
 
                              
 「オーストリア語」の個人体験的・実践小研究  
 
  『例えば、英語、英語と言いますが、英語にも「イギリス英語」やら「アメリカ英語」やら「オーストラリア英語」やら「インド英語」がある、と言います。最近は「日本英語」もあるとか。とにかく、ドイツ語、ドイツ語と言っても、本場ドイツのドイツ語もあれば、本場オーストリアのドイツ語もあれば、本場スイスのドイツ語もありますよね。 
 
 
  ドイツのドイツ語といっても、遠くから目を細めて概観するのではなく、もっとぐっと近寄って見ると、それはそれはそれぞれの地方にはその地方特有の”ドイツ語”というか、外国人が普通、一般的に学ぶ所謂「標準ドイツ語、またの名をHochdeutsch とは違ったものが見えてくる、というか聞こえてくるのですね。聞こえてきても分かりませんが。オーストリアのお隣、ドイツ、南部地方、バイエルン州ではbayrischが喋られている。ドイツ語のように聞こえないこともないですが、ドイツ語とは思えないほどに聞き取れません、少なくともわたしの場合は、一生懸命に耳を傍立てても、です。書かれたものを読もうとしても理解できません。』
 
            
 ・・・・・・・・・・・・ そんな会話が夢の中で相変わらず交わされていました。
  
 
 
 
 
 
 『とにかく、早く「オーストリア語」が分かるようになりたいもの!!』
 
  
 
  『いや、いや、それは無理ですね。 
 大人になってからオーストリア国に、ある特定の場所に住むようになったとしても、例えば、ウィーンに住むようになったということにしましょうか。ウィーンには「オーストリア語」のウィーン語、Wienerisch というのがあるそうですよ。簡単に言えば、「ウィーン方言」があ 
 ります。グラーツにもGrazerisch(?)があるのではないでしょうか、良くは知りませんが。グラーツを訪れた時、土地の人に道を訊いた時、なんとも理解し兼ねる体験をしたこと
 があります。 
 
  当地リンツには Linzerisch(そう書き表すのかどうなのかはまだ調べていませんが)とでも言えるもの、つまり「リンツ方言」があるのか、全身耳にしても分からない。漸く分かった一つありますが、カタカタで敢えて書いてみると、「ゲ〜ンマ」。さあ、出掛けようか、といった当地独特の表現法らしい。 
 
 
  オーストリアの西部、スイスと国境を接したフォラルベルグ州では Voralbergisch語(これもオーストリア語の方言のひとつ)が喋られていて、オーストリアの別の地方の人は理解できないと良くオーストリアの別の地方の人たちはわたしに説明してくれます。「はあ、そうですか」とわたしは感心するような、 
 認識を新たにするような、狐につままれたような、何とも返答の仕様がありません。』
 
 
 
 『要するに、オーストリア国の各地に「方言」があるということですか。』 
 
 
 
  『まあ、そういうことですね。上でも言いましたように(書きましたように)ウィーンには Wienerisch 
 というウィーン方言があって、ウィーン界隈でしか通用しない言葉、その発音の仕方、表現の仕方があるということになるでしょうか。 
 一つ一つ方言を落穂拾いのごとくに拾って行って(言って)見るしかないでしょうかね。』
 
 
 オーストリア語 (オーストリアの方言)の一例
 
 Wonn i kemma ko, 
 kimm i, i wia owa koam kemma kinna.
 
 ドイツ語翻訳 
 Wenn ich kommen 
 kann, komme ich, ich werde aber kaum kommen können.
 
 日本語翻訳  来れれば来ます、でも殆ど来れないでしょう。
 
 
                   
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 夢から覚めて、現実を見定めよう。
  
 
 オーストリアには結構たくさんの日本人も含め多くの外国人が住んでいますが、、、、このオーストリア語の問題にどう対処しているのでしょうか、 
 他の人のことは正直に言って、全然分かりませんが、わたしみたいな外国人にとっては、この問題、この「オーストリア語」は負担であるということなる。 
 そう捉えざるを得ません。
 
 一、二年前だったでしょうか、記憶にまだ新しい、というか記憶がはっきりしていないのですが、 
 外国人がオーストリア国に滞在・居住できるようになるためにはドイツ語、この場合、「オーストリア語」つまり所謂”標準ドイツ語”と言えるものでしょう、 
 このドイツ語が繰れることが条件になりました。 
 
 「オーストリア語」が出来ないと滞在許可も下りなくなるよう 
 なのです。そんな法規定ができました。ドイツ語(またはオーストリア語)の学習が義務とされました。ドイツ語コースに通って、当局が認める結果を出さないと滞在許可は下りないという話だそうです。オーストリア国に長期滞在希望の外国人はドイツ語コースに参加させられるようです。 
 
 
 私の場合はその法規が成立する前にオーストリア国に居座ってしまいましたので該当しませんが、前であろうと後であろうと、住むとなると土地の言葉を理解することは必要なのですが、、、厄介です。
 
 確かに、これは当局にとってだけでなく、オーストリア国にやってくる(やってくる理由は政治的であったり、経済的であったり、色々のようです)、いや、やってくるだけではなく、住み着くようになる外国人にとっては大きな障害の一つになっているようです。オーストリア国入国を目指してやってくる外国人に対する取り扱いについてはオーストリア国政府にとっても少々頭の痛い問題を抱えています。外国人を一時的に収容する場所はパンク状態ですし、でも外国人は居住を希望してオーストリア国にやってくる。この波は止まらないようです。 
 オーストリア人になる人も結構いるようです。
 
 とにかく、困った、困った、となるのです。本人にとっても、関係者にとっても。 
 
 
 土地の方言で喋られてしまってはドイツ語またはオーストリア語での意思疎通に支障をきたすことは火を見るより明らかで、わたし自身の卑近な例を出しますと、隣の町のWels、あるコンピュータデーター会社に就職するつもりで3日ほど、会社の仕事の成り行きを肌で感じるように擬似入社体験(これを「オーストリア語」では 
 Schnupperと表現するようです。日本から持参した「ドイツ語」辞書には載っていません。)をしたことがありますが、オフィス内、オーストリア人同士で喋っていることが 
 聞き取れない!  
 
 自分の耳が悪いのかと、自分の耳の穴をほじくってみたが、全然効果がない。聞き取れないものは聞き取れない。本当にショックでした。後で聞いてみれば、ここの人たち 
 もやはり方言を喋っている、と。 それを Welserisch 
 と称する也、と判明。お互いに方言、つまり特殊な「オーストリア語」で意思疎通をしている、ビジネスをやっている。 
 
 そんな環境の中へ飛び込んで、一緒に仕事をやろうとしても無理ということも判明。オーストリアの地方の会社で働くことの難しさを肌で、耳で体験した次第でした。 
 
 わたしは Japanischを喋れることになっているが、このJapanisch を登場させる機会は殆ど皆無です。
 
 
  
    *     *
 
 オーストリア人は外国語については、いかがなものか。
 最近の、当地の新聞報道によると、以下の通りであったとのことです。
 
 「オーストリア人」と「外国語」
 
 質問:あなた(オーストリア人)は 少なくとも上手く話せる、または良く理解する外国語はなんですか?
 
 2005年9月〜10月までに1000人にアンケートを取った、とのこと。
 
 
  
                
        
  
  
   
    | 
英語 | 
    
    
      
    53% 
       | 
   
   
   
   
   
   
   
                |  フランス語 | 
    
    
    10% | 
   
   
   
    | 
    イタリア語 | 
    
  
   
    
7% 
       | 
   
   
   
    | 
    スペイン語 | 
    
 
    
  
2% 
   | 
   
   
   
    | 
    セルビアクロアチア語 | 
    
    
  
2% 
   | 
   
   
    | 
    ハンガリー語 | 
    
    
  
2% 
   | 
    
   
   
 
   
    | 
    チェコ語 | 
    
 
    
  
1% 
   | 
   
   
   
    | 
    ロシア語 | 
    
    
  
1%  
   | 
   
   
    | 
    トルコ語 | 
    
    
  
1% 
   | 
    
   
   
    | 
    その他 | 
    
  
3% 
   | 
    
   
  
  
  
 出典:IMAS 
  オーストリア ドイツ語  ここ以外のどこかへ!;旅の指さし会話帳 
        48 
(Marchtrenk 26.August 2004)