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(著), Lotta Jansdotter (原著)
北欧スウェーデンの幸せになるデザイン山本 由香 (著)
ねえ、それ
、美味しい? ヨーロッパひとり旅 ↑ スウェーデンに住んだ
No.47■はじめてだった、ヨーロッパ(スウェーデン編)ひとり旅■
19xx年11月27日(水)曇り、時々雪
Östersund
出発の日
昨日、いつも 通っていた市内の図書館、そこに備え付けてあった電話帳でノルウェー娘の電話番号を幸運にも探し当てた。彼女に直接面と向って教えて貰うことも聞くこともなかったが、これで知ることが出来た。
図書館の外へと出て行って、公衆電話から掛けた。図書館内の公衆電話からは掛けたくはなかった。図書館の中にいる人たちに個人的な会話を聞いて貰いたくはなかった。二人だけの会話にしたかったからだ
。
相手の受話器が取られた。ノルウェー娘と話したい旨を告げた。
「彼女はここには住んでいないよ」
あっ、そうですか。どうも、と言いながら普通なら電話を切ってしまうのだが、住んでいないよと知らされて、がっかり、困った、どうしよう、と思いながらも今回は諦めることなく通話を続け、何とか彼女の居所の電話番号を聞きだすことが出来た。
そこに掛け直した。
呼び出している。 2度、3度、4度。応答がない。 いないのだろうか。 後で掛け直すことに決め、老夫婦の息子夫婦が住む高層アパートの家に戻って行った。
今、宛がわれた木製の二段ベッドの下、そのベッドに両腕を枕にして寝転がっている。
夕方までには時間がある。スウェーデンもこれでお別れだ。そんなことを思うともなく思っている。
奥さんがドアから顔を覗かせた。老夫婦の、息子さんの、奥さんだ。
「何処に行ってたの?」
「電話を掛けていたのです」
「ここから、部屋の中に電話を持って来てドアを閉めて、掛けることが出来きるわよ」
ヒロの立場に理解を示す。
「分かりました。また、後でそうします」 奥さんが買い物に出掛けて行った。まるで気を利かしてくれているみたいだ。午前10時過ぎ頃、再びアンネの所に電話を掛ける。数度の呼び出しで、ようやく受話器が取られた。
「アンネさんと話したいのですが、、、、」とスウェーデン語。
「私です」
不愉快だ、電話が掛かってきたのは不愉快だといった声の調子。ぐっすりと寝ていたのだろう。それが何度も何度も電話が鳴っているので目覚めざるを得なかった。起き上がってきた。受話器を取った。
「今晩、レストランに行って君と再会することが出来ません」
暫しの沈黙が不安定にも漂った。
「そう」
「残念だけど、もう行かなければならない」
「どこへ?」
「ストックホルム、スウェーデンを出なければならない」
「・・・・・・・・・・」
「Jag älska dig. 君が大好きだ」
「でも、私にはもう好きな人がいるのよ」
「会えて楽しかった」
「・・・・・・・・・・]
「さよなら、、、」
「さよなら。元気でね。」
アンネも気を取り直し、元気が出たのか、元気を出して答えた。
「さよなら、、、」
そう言いながら、ヒロの目には涙が込みあげてきた。喉が詰まった。受話器を下ろした。彼女が高校生のときに読んだというストリンドベリの小説『赤い家』はヒロの手元に残った。
これからは一緒に旅をするのだ。
* *
夕方、シェルはヒロのためにストックホルム行きの長距離のトレーラを見つけてきてくれておいた。ヒッチハイクをしながらも道路上、寒い中を長い時間立つ
、そんなことを覚悟していたのだったが、そうせずに済む。有り難い好意だ。最後の最後までお世話になってしまう。
その車が発車するという場所までシェルと一緒に雪で覆われた道を歩いて来た。
運転手さんに一応紹介され、車の運転台に腰掛けた。これに乗って、ストックホルムまでノンストップでスウェーデンを一気に南下できる。
* *
今、冬の、夜の、雪のスウェーデンの中を走って行く。夜の国道を車は重たく疾走する。
運転台の中、暖房が利き過ぎているかのようだ。ラジオからはスピーカーを通してガンガンと音楽が車の走行音に混じって雑音の如くにこの耳の鼓膜を容赦なく叩く。
運転手さんとは会話をしながら道中を過ごそう。そんな風に心の準備をして来て見れば、これでは無理だ。スウェーデン語なんて話せない外国人ということで最初から会話をするなどということは念頭になかったのかもしれない。もしかしたらこれが運転手さんの真夜中の運転の流儀なのかもしれない。
深夜のスウェーデンを走って行くので、居眠り運転に陥らないように意識的にそうやってラジオのボリュームを上げているのだろう。助手席に誰がいようとも構わないのだ。運転手さんにとっては安全運転のためにも、また運転の単調さから逃れるためにも必要なのだろう。
ストックホルムへと深夜の道路を黙々と疾駆するトレーラ。全行程、一度も言葉を交すこともなかった。
19xx年11月28日(木)小雨 ストックホルムには早朝に到着。写真で見た通りに水に囲まれたかのような都市だ。北欧のヴェニスと言えようか。水辺に近寄ってみる。岸辺、足元では水面が風に吹かれて上下しながら地上に乗り移ろうとするかのようだ。
冷たい空気を吸っている。蒸し暑いくらいの車中にずっと居座っていたので、余計に外の空気の冷たさを感じる。
ストックホルムの駅へと歩いて行った。構内、閑散としている。改札口の所におばさんが一人、ちょっとした朝食を取っている。昨晩からずっと無口を通してきたヒロはスウェーデン語
が喋りたくて、押し出されるかのように話し掛けた。午前5時ごろだっただろうか。
「何処から来たの?」
「Östersund」
一言、そう答えながら、今はストックホルムに来てしまっている自分、もうあの町にはいない自分、それぞれの自分を感じていた。
「そこで何してたの?」
「スウェーデン語の勉強」
「どのくらい?」
「3ヶ月ほどです」
「そんなに上手に喋れるようになれるの?」
スウェーデン語で会話をしているヒロは自分が誇らしかった。日常会話がそれなりにつつがなく出来るようになっていた。Östersund の皆さんのお陰だ。
ストックホルムから Östersund のシェル宛てに絵葉書を書き送った。
Klockan 4:45 blev ja en man in
Stockholm, nära "Telefonplan". Det var mycket mörkt ännu. Vad ska jag
göra? tänkte ja. Mycket tidigt på morgonen. Jag var trungen att lysna
bullriga musik hela vägen från Östersund. Jag kunde int sova. Mycket sömrig och
trött nu. Jag behöver sova, men war då nu? Jag måste göra först vad måste
göras. Men därför att det är för tidigt nu, jag bara väntar på all människor i
Stockholm vakna och komma ut så att jag kan prata och fråga mågonting.
Hejdå! Hiro
そう、現実にスウェーデンの首都、ストックホルムにやって来ているのだ。Sveriges
huvudstad heter Stockholm.ストックホルムにやって来たら、市内どこかに滞在して、どこかのレストランで働こうと思っていたが、この寒い中、定着するための寝場所、そして仕事を見つけることの煩わしさ
、これらのことを最初からまた始めなければならないと思うと
何故か気が進まない。それよりも、この寒さ! 暖かい南の方へと逃避行したい。
ストックホルムでは話に聞いていた、船のYH(ユースホステル)に泊まった。防水ガラス窓に目を近づけると海水に手を伸ばせば直ぐ届くかのようだ。その海水の揺れ動いているのをしばらくじっと見ていた。
自分も海水に浸かっているかのような感覚になり、ちょっと眩暈を感じた。
またも、いつもの一人切りになってしまった。異国にいる自分を感じ、冬空の下での旅を思いやっていた。自分を信じてこれからも旅を続けて行くのだ、と。
日本向けに絵葉書を送った。 19xx年11月28日(木)小雨 ストックホルム発
日本のみなさん、お元気ですか。約3ヶ月半、スウェーデン中央部の町、Östersund市の郊外に住んでいました。来年の春まで滞在していたかったのですが、スウェーデン当局から
は居住許可が得られず、昨晩Östersundを去って、今日、早朝、ここストックホルムに到着。これからスウェーデンを去ります。デンマーク(コペンハーゲン)を経由してドイツ(キール)を目指
して旅を続けます。そこで数ヶ月滞在する積もりです。
ウェーデンを去らねばならない。とても残念。尤も雪の中に閉じこめられる心配は無くなった。
スウェーデン滞在もあと数日残すだけ。スウェーデンを去るためにもう動いている。
今日は一日中、重いリュックを背負ったままストックホルムの街、雨に降られながら観光の積りで歩き回った。歩き続けたので、濡れた。疲れた。
19xx年11月30日(土)曇り
ストックホルムを出発。Helsingborg へ向けての旅を開始。
まずは国道E4へ行かなければならない。市外へと出るのだ。まずは地下鉄で移動することに決めた。地下鉄料金のことも考慮しながらも国道に一番近いと思われる駅まで乗ってきた。
地上、道路に出て来て見れば、車が殆ど走っていない!
ヒッチハイクが出来るような状況ではない。全行程を歩いていかなければならないのか。
雪の道路沿いをとぼとぼと歩いて行った。何時まで歩くことになるのだろう? ちょっと絶望的な思いになっていた。
パトカーが近寄って来た。歩みに勢いが付いていたので、そのまま歩き続けようとしたが、いや、ちょっと待ったほうが身のためだろう、と思い直して、立ち止まった。実は乗せて行ってくれ
るかもしれないと暗に期待したのだった。
ウィンドウを下ろし、顔を出した警官、見れば外国人であることが分かったのか、その口からは英語が出て来た。
「ここは高速道路だ、人間は歩けない」
もう歩いているよ、と内心答えていたが、そのまま黙ったまま耳を傾けていた。
人間が歩けるという、その告げられた道路へと雪の積もった中を歩いて行った。やって来てみれば、この道路も同じだった。車が全然通っていない。埒が開かない。人間は歩けないと言われた元の高速道路E4に戻ってゆくことにした。
歩き続けた。パトカーは二度とやってこなかった。
雪の中、リュックの荷物が重い。肩に食い込む。痛い。何ヶ月ぶりか、今日はじめて、重い荷物を担いだ。そして今、旅が新たに始まったばかりなのだ。
時々、思い出したかのように車が猛スピードで通過して行く。サインを送ったところで止まらないことは火を見るよりも明らかだ。ここは高速道路だ。それでも止まる可能性を信じてヒッチハイクを試みる。
歩き続けた。重いリュックが肩にもう嫌というほどに食い込む。歩かざるを得ない状況なのだから、歩いて行くことに不満はない。ただ、重たいリュックを背負って進んで行かねばならぬことが
難儀であった。
* *
ヒッチハイクをしているサインを送ることはとうに諦めて、歩くことだけに専念していた。
前方に自動車が”自動的に”止まった。
ヒロを待っているのだろうか?
その通りであった。(旧)ユーゴスラビア人の若い男性とスウェーデン女性のドライバー。
E4とE3との分岐点まで乗せて来てもらった。ダイダイ色の太陽が15分間のドライブ中に見られた。
下車する際、彼女より薄荷飴を数個手渡された。礼を言って再び歩き始める。
暗くなってきた。まだ午後3時過ぎである。沿道には民家も見られなくなり、何処までも歩いて行かねばならない。そんな殺風景な雪風景が続く。
両側は森。とにかく電灯のついている建物が見えるところまで歩いて行こう。少々諦めた気分で歩き続ける。両肩が痛む。
* *
2台目であった。またも前方に止まったまま、ヒロがやって来るのを待ってくれていた。 車の中で、「何処か近くに寝られる場所はないものか?」などと話しているうちに彼女の、彼の友人のアパートがあるとのこと。E4を逸れてそのアパートの入り口前まで乗せてきて貰った。午後4時だった。
ヒロ一人だけの、アパートの一室。散らかったまま。荒れ放題。人間が暮らせるような場所ではない。勿論暖房もない。
着の身着のまま一人寂しく長ソファーの上で就寝する前、何か腹の足しになるものでもないものかとキッチン内、全ての戸棚を開け放って隅から隅まで物色した。何もない。
二人は
明朝9時に迎えに来てくれると約束してくれた。
こうなるとは想像だにしていなかった。緊急事態の発生だ。彼女、アンネに電話しなければならない。早く伝えよう。
今晩、レストランで会う約束をしていたのだったが、今晩が来る前に、ああ、何たることだ! 余りにも唐突ではないか!?
出発しなければならなくなってしまった。出発する前に、永久に別れ離れになる前に、もう一度だけ彼女の声だけでも聞きたい。
Hej!