北海道直送・しーおー・じぇいぴー

襟裳岬→白老  日本一周ひとり旅↑ 札幌→洞爺湖畔   
「第41日」 
  

      
19xx年9月15日(金)曇り
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 白老→ 札幌









 
■トースター一台

 
白老YHの朝食はパンとサラダ。トースターは一台だけ。

 食卓に集うホステラー達、一人一人の喉の奥の方から言わば手が次々とトースターの所へと伸びて来るが、トースターの中でこんがりと焼き上がって飛び出て来るトーストの数は一回につき二枚と限られている。

 これでは各人の食欲に間に合わない。朝食参加者相互間にはトースト獲得のために、暗黙の、目に見えない順番待ちの列が自然と出来るような格好になってしまった。

 「次はあなたですか、だったらその次は私の番ですね」

 お互いに目と目で牽制し合いながら、無言の会話を交わしている。



 




 ■幸先の良い、初っ端からのヒッチ成功

 午前9時20分、YHを出発。

 YH前の国道へ進み出て、やってくる車に向って颯爽と手を上げた。一台のトラックが止まった。グットタイミング。何と幸先の良いことだろう。待つことも歩くこともなく出発!恰も予約してあったかのように、車は止まった。

 聞いてみると、今朝、午前2時に家を出たそうだ。この運転手さんの場合、退屈だから手を上げれば直ぐに止まるのだそうだ。

 ある時、外人二人組みをやはり暇で退屈だったから気前良く乗せた。乗せたのは良かったのだが、ただその外人たちの腋臭(わきが)が物凄く強烈で耐えられなかった。鼻が一本、ひん曲がってしまった、と。こうして思い出して話しているだけでも、当時の体験が臭く蘇って来るよ、と。

 30分間のドライブ、支笏湖入り口まで来た。こんな見事な乗り継ぎは初めてだ。気分がとても良い。幸先の良い計らいに嬉しかった。



 下車した所、そこからは片道3車線となり、外側の一車線を通る車は殆どない。車を捕まえることはちょっと難しい。道路が二車線に狭まる所まで30分間、歩き続けた。

 道路沿いにいつものようにヒッチハイカー風に突っ立っていると、そ〜らっ、バンがこちらの方にやって来て前方で止まるではないか!

 「何処まで行くの?」

 車の中から顔を出して訊く。可愛い女の子だ。おかっぱ頭、唇が真っ赤。ぽちゃぽちゃ。

 「支笏湖まで」

 「そう、乗せてってあげるわ」



 
彼女のちょうど後の席につく。シャンプーで洗ったばかりの髪の毛、その匂いがプーンと漂ってくる。専門家の犬さん達とは比較にはならないが、人一倍敏感な鼻を持ったぼくだ。この匂い、鼻につく。暫くすると、ちょっと頭が痛くなってくる。外人さんを乗せた運転手さんのことが思い出された。

 運転手君の彼女ということなのだろうか、お二人でこれから樽前山(タルマエサン)登山をするそうだ。



 



 
■無感興の支笏湖

 
午前10時47分、支笏湖畔で降ろされた。道中、前方の山、そして空は雲で被われ、今にも泣き出しそうな空模様であった。

 早速、支笏湖畔まで歩いた。が、別に何の感動も湧かない。湖上の空は厚い雲で被われ、寒々とした湖畔風景だ。湖を取り巻く山々もそうした印象を強調している。

 湖上にはボートが50艘ばかり。今日は偶々全国的に、そして当地でも休日だからか、札幌方面から来たと思われる人たちが沢山浮かんでいる。近くの駐車場は昼頃、車で一杯になった。

 明日、つまり結果的に会った、ドイツ人学生によると、支笏湖はヨーロッパの湖を連想させる雰囲気を持っているそうだ。

 支笏湖には予定よりも余りにも早く到着してしまった。しかも、残念ながら支笏湖は近くに長く居れば居るほど、ぼくを惹き付けない。

 支笏湖郵便局前の敷地にそのまま腰をどっかりと降ろして、さて、どういうコースを取ろうかと地図とにらめっこ。

    支笏湖の南岸沿いを通って洞爺湖へと抜けようか。

    北岸沿いにオコタンペ湖に寄って、それから洞爺湖へと行こうか。
 
    それともオコタンペ湖に寄って、そのまま札幌へと抜けようか。

 この3ルートが考えられた。

 今日は休日のことだし、車はどの方向へとたくさん走って行くものだろうか、色々考えあぐねた末、第3ルートに決めた。



 





 
■合図なしのヒッチ

 午後零時40分、支笏湖畔有料道路数百メートル手前、ちょうど良い具合に四角い石が道沿いにぼくのために設置してあり、その上に腰掛けて通り過ぎる車の流れをぼんやりと眺めていた。

 車の中は殆どアベックか、家族旅行なのだろう、それらしき人達で一杯。40分程、あーあ、どの車も人で一杯だなあ。



 



 
■札幌に戻る

 
一台の乗用車が目の前に止まった。合図を送ったわけでもない。でも何かが伝わって行ったのか。何も送らない合図も時には合図となるのか。この車に乗って久し振りに札幌の街に戻った。午後1時40分〜2時40分まで。

 この運転手さん、なかなかのインテリ。アメリカなど外国に何度も行ったそうで、不満と言える点は視察旅行と言っても名だけのもので、それだけでその国を判断出来るだろうか、多くの人はそれだけで分かったような顔をするが、どんなものだろうか、と。

 ご尤もご尤も! ぼくはまだ外国に行ったことはないので実際どうなのかは知らない。でも、良い聞き手であることを心がけようと、また話し手としては合いの手が必要だろうと思ったので「はい、はい」と相槌を打ち続けていた。

 札幌市内ではデパートの地下で試食販売の箇所から箇所へとさっそく試食を趣味にしているかのようにゆっくりと楽しみながら店内を一周、二周、少しでも腹をふくらませる努力を積んだ。本屋に入っては本を漁(あさ)って立ち読みをした。

 午後5時頃には、札幌駅に行ったが、待合室は工事中。急遽YHに泊ることに決めた。道案内を聞いて見れば、ライオンズYH、分かりにくい所にある。

 半ば車の前に立ちはだかって止めた車、頼んでYHまで乗せて行って貰った。自動車のフロントガラスは霧雨に濡れていた。YHに電話予約を入れたところ、「夕食までに来い」とのこと。本当に助かった。夕方6時前。

 




 
■YHでワルツの講習

 
夕食後のミーティング。歌とフォークダンス。年若いペアレントが率先して、ワルツのステップの講習をしてくれる。ワルツなんて何処で習ったのだろう? 

 ダンスをすることなどYHでのミーティングでは文字通り初めてのこと。楽しかった。

 ペアを組んでペア同士がお互いにぶつかり合ったりして、皆、一生懸命に踊った。動き回ったので久し振りに汗を掻く。

 体全体でクルクルと回ることばかりで目も回ってしまった。実は優雅なワルツと言えるものではなく、別のカップルとの体と体のぶつかり合
、触れ合いを通して皆一緒に仲良くなるという、そんな夜の時間を過ごした

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