海外へ無料で行く極秘マニュアル
毎回、ドイツ語新聞記事を読む、楽しむ
スウェーデン編
No.25」 何? 老夫婦はこの日本人を養子に迎える積りだって!?
No.27−1」スウェーデンはもう9月! 濃霧の中、朝の出勤、自転車でゆっくりゆっくり
No.27ー2」スウェーデンの女の子たちとスウェーデン語で話せた!
No.29 」ノルウェー娘がまたやって来た! えっ、18才なの!?
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ける極秘マニュアル
No.39
」
レストランでの仕事が出来る日は今となっては、土曜日と日曜日だけ。
No.41」Festに参加。真夜中の道、一人で歩いて帰った。
No.45」食事室で英文学を読む
No.48 スウェーデンに住んだ |
No.36 ■はじめてだった、ヨーロッパ(スウェーデン編)ひとり旅■
19xx年10月08日(火)薄曇 月曜日の朝、つまり昨日、午前8時過ぎ、家の電話が鳴った。ヒロはまだ自分のベッドの中であった。電話のベルで半分目覚めてしまった。
ああ、ベルが鳴っている。
半分目覚めた意識がベル音を聞いている。と、板床を重く歩く音。電話機のある所へと足音が近付いて行く。ベルの鳴りが止まった。 応対の話し声がこの耳に届いてくる。
「彼は寝ています。でも電話の音に気が付いたようですよ」 受話器が一旦テーブルの上に置かれた。またも足音だ。
今度はヒロが寝ているベッドの方へと迫って来る。 ああ、こちらにやって来る。何の用だろう?
ヒロに電話してくる人などいない筈だが… 誰だろう?
ヒロは電話に背を向けたような格好で腹這いに寝転がっていた。と、背中に触れて、揺り動かして、ヒロを起こそうとする。 いや、完全に目覚めさせようとする両手と声。
「レストランから電話。今日働けるかどうか、尋ねてきたわよ。働けるの?」 「ええ、働けますよ」 ヒロは背中の声に答える。ヒロはベッドの上で猫のように一度背伸びをした後、直ぐに跳ね起き上がった。ジーパンを履いた。 靴下を履いた。シャツを着た。靴を履いた。直ぐに出掛けるのだ。 自転車を引っ張り出してきて、直ぐに国道を駆ける人となった。働けるのだ。 万歳!万歳!心の中で諸手を挙げていた。 ヒロは満足であった。今日も働けるのだ。日曜日の夜からの、仕事の疲れがまだ残っていたが、そんなこと気にしてはいられない、 それを無視するヒロの、素早い起床であった。起床から国道を走る人になるまで、5分と掛からなかった筈だ。ヒロは嬉しいのだ。 ペダルを一生懸命漕いでいる。 最初、電話音によって深い睡眠から目覚めた後の二三分間、半睡眠状態の中で考えていた。今日は何をしようか?仕事はないし、 家に一日中いるのは退屈だし、いや、苦痛でしかない。 家には絶対に留まっていたくない。 それでは何をしようか? 多分図書館にでも行こうか。 仕事のない日に行ける場所といったら、少なくも今の自分にとっては図書館だけのようだ。 公園もあるが、そこで数時間を一人で過ごすのは侘びし過ぎる。憂鬱になってしまう。 今の自分にとって必要なのは沈みがちな気持ちを浮き上がらせてくれるもの、好きなことをやる必要なのだ。 かくして、先週の土曜日から今日の火曜日まで四日間、連日、働くことが出来た。休暇から戻って来た、 本来の働き手である女性が何の病気かは知らないが、病気のためにレストランに出勤できなかったのだ。 仕事日でない日のヒロは、何故か心が楽しまない。年老いた彼等二人と一緒にいると益々心が沈んでゆく。どうしてだろう? 数日前、彼等たちはそんなヒロの様子を見て取った。ヒロに向かって来た。ヒロはちょうど自分のベッド で寝ようとしていた。が、彼等たちはヒロをそう簡単には寝させようとはしない 。 「あなたと少し話したい」 彼等たちはいままで鳴り響いていたテレビの音声を消してしまった。 「ヒロは今、話したい気分ではない!」 ヒロは心の中で答えていた。 「あなたと話すことを試みたい」 試みたい、という言葉を強調している。 「ヒロは口を利きたくはない」 このヒロの気持ちがそう簡単に分かって貰いたくはない。とにかく、この気持ち、この気分を口外する意思は全然ない。 が、ヒロは彼等達の気持ちを落ち着かせる意味で、何かを言わなければならなかった。彼等たちは色々と自分達の気の回しようの成果を直接ヒロにぶつけてきた。 「私達と話し合うのがトローキックなんじゃないの?」 「トローキック?」 退屈しているという意味だろうか。そうだとしたら、全くその通りだ。図星だ。退屈で死にそうだ。退屈で、退屈で仕方がない。 ヒロは心の中で叫んでいた。オレは退屈に我慢できないのだ、我慢出来ないのだ! 心の中で叫びまくっていた。 最初、退屈を意味するスウェーデン語の単語の意味が理解出来ていなかった。何度も、何度もその単語を強調するかのように言ってくるので、 一応の話し合いが終わった後、記憶に残った、その単語を辞書で調べてみた。tråkig
とは、退屈であること。正にヒロの気持ちを捉えていた。いや、ヒロの心の内をハッキリと捉えることが出来ていた二人であった。
質問には直接答えず、ヒロは言った。
「書けるならば、ヒロは満足感を抱くことが出来るのですよ。ヒロは作家になるのです」
彼等たちはこのヒロの言葉に触発されたかの如く、更に次の質問を直接ぶつけてくるのであった。口の重たいヒロ
にむかって何とか口を開かせようとする。
「書くために色々とたくさん考えなければならないんでしょう?多分、考えごとの所為で疲れてしまうのね」
ヒロが考えていなかった理由をヒロに代わって見つけてくれた
それは良い理由だ。ヒロはそう思った。これ以上話し合うのを嫌って、彼等たちの気の回しようにヒロは同意を表明するのであった。
早く話し合いとやらを終わらせてくれ! オレはこのとおり疲れてしまっている。
二人は納得したようであった。話し合いは終わった。自分達のベッドへと歩いて行った。ヒロはそのまま仰向けにベッドの上に寝転がった。
暫くはそのままじっとしていた。何と言うことだろう、益々退屈な自分に飽き飽きしてきていた。
Jag
är tråkig!
Jag är tråkig! JAG ÄR TRÅKIG!
その何となくヒステリックな声はヒロを苦痛の奈落に陥れるかのように響いた。逃れたい。でも逃れられない。
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